妊娠が頭にない場合、ちょっと風邪かなと思ったら市販のお薬を気軽に飲んでしまった、ということもあります。
妊娠4週~15週目は期間形成期といわれ、赤ちゃんの体の器官の基礎がつくられる時期です。
そのため、薬の影響も、最も出やすい時期であるといわれていますが、市販薬には一般的に強い作用のある成分は使用されていません。
短期間飲んだだけならそう心配はないと言えますが、妊娠週数、薬の種類や量にもよるので簡単には判断できません。
不安になったらまず、産婦人科に相談を。
また妊娠中の人は妊娠中の薬の服用について知っておいたほうがよいでしょう。
妊娠中のトラブルや不調に用いられる薬
妊娠中に処方されがちな薬とは
①お腹の張りが酷いとき
妊娠中は赤ちゃんや妊娠経過に問題がなくても、おなかが張ることはあります。
横になったり、座って休んだりすればおさまる程度なのであれば心配はありません。
ゆっくりと安静に過ごしてもお腹の張りがおさまらない時や、頻繁にお腹が張って辛くなったり不安になる場合に、「子宮収縮抑制薬」が処方されることがあります。
よく処方される子宮収縮抑制薬は、
1.ウメテリン
妊娠16週以降から服用できる薬。動悸や手足のしびれ、眠気を感じることもあります。
成分はリトドリン塩酸塩で、子宮の筋肉を緩める作用があります。
2.ズファジラン
血管を広げ、子宮の筋肉を緩める作用があります。
成分は、イソクスプリン塩酸塩で動悸や吐き気、頭痛、めまいを感じることもあります。
副作用が辛い場合にはすぐ、医師に相談しましょう。
3.ダクチル
成分は、ピペリドレード塩酸塩で副交感神経に働きかけて血管、子宮の緊張をやわらげます。
また、子宮の収縮や子宮筋肉のけいれん運動を抑えます。
口の渇きを感じることがあります。
これらの薬の目的は、あくまでお腹の張りをやわらげること。
お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどないといわれていますので安心して服用してください。
②出血があったとき
妊娠初期といわれる13週くだいまでは少量の出血や茶色のおりものが出ることもあります。
これは、受精卵が着床するときの出血などで、ほとんどの場合は心配しなくてよい出血であるといえます。
一般的には「止血剤」が処方されますが、妊娠初期には薬を使用しないこともあります。
そして、胎盤が完成する妊娠14週から16週以降の出血は、すぐに主治医に相談してください。
切迫流産や早産の心配も。
主に処方される止血剤は、
1.アドナ
毛細血管の壁を強くすることで止血効果を促します。
働きの異なった別の止血剤と併用することもあります。
稀に、食欲不振や胃の不快感を感じることも。
2.トランサミン
人体は出血すると血を固めることで止血しますが、これに抵抗した働きが出てくることもあります。
トランサンミンは、そのような働きが起こるのを防ぎ、炎症をやわらげる効果も。
止血剤は、出血が止まってもしばらく飲み続ける必要がある場合があります。
自己判断で飲むのをやめてはいけません。
いつまで服用するべきなのか、しっかりと主治医の指示に従いましょう。
③鉄欠乏症になったら
妊娠中はどうしても、胎盤や赤ちゃんを育てていくために普段よりも多くの「鉄」が必要になります。
しかしながら食事だけではなかなか鉄の供給が追い付かないので、多くの妊婦さんが鉄欠乏症に。
貧血が重度になると、赤ちゃんの発育の妨げになったり、妊婦さんの体の動機や息切れの原因にもなります。
鉄を補うために、「鉄剤」が処方されることがほとんどです。
鉄材を飲み始めれば、2カ月ほどで貧血は改善します。
しかし、大抵の場合はいったん鉄欠乏症と判断されれば出産まで飲み続けることになります。
主な鉄材は、
1.フェロミア
2.フェログラデュメット
3.フェルム
などで、錠剤の他にも顆粒やカプセル、シロップなどもあります。
気持ちが悪くなったり、胃痛や便秘といった症状がでることもあります。
また、服用すると便の色が黒くなることも。
貧血予防を兼ねて市販の鉄のサプリメントを摂っておくのもいいでしょう。
この際、一緒に摂ってほしいのが「葉酸」です。
葉酸は造血作用、妊娠中の高血圧防止にも効果があります。
双方を上手に摂れるサプリメントで、貧血ケアと妊娠中のトラブル予防を。
④妊娠高血圧症候群
妊娠中は検診のたびに血圧を測ります。
もしも血圧が高血圧(上140、下90以上)になれば、妊娠高血圧症候群であると診断されます。
高血圧は、赤ちゃんの体重不足や早産に加え、出産後のけいれんなどのリスクも高くなるので、速やかに治療しましょう。
基本的には、食事療法と安静。
症状が軽ければ自宅療養ですみますが、入院が必要になることも少なくはありません。
入院すると、降圧薬を処方されることがありますが、これはあくまで血圧を下げるのが目的の薬。
根本的な妊娠高血圧症候群を治療する薬ではないので、食事療法と安静の継続が鉄則です。
主に処方される降圧薬は、
1.アルドメッド
歴史の古い降圧薬のひとつで、成分はメチルドパ。
血圧を高くしている交感神経の働きを抑えて、血圧をさげていきます。
2.アプレゾリン
血管を広げることで内部を流れていく血液の圧を調整します。
効き目が早く、妊娠中の服用も問題視されていない薬です。
妊娠中の風邪や胃痛、飲んでいい薬の成分は?
妊娠中であっても、風邪や胃痛、頭痛など病気のきっかけになるウイルスをよけることはできないものです。
実際に病気になってしまったら、どんな薬を飲めばいいのでしょうか?
妊娠中の7つの病気別選ぶべき薬と成分
①風邪をひいたら
妊娠中の風邪は本当につらいもの。
妊娠初期で気が付かずに風邪薬を飲んでしまい、不安になってしまう人も多いものです。
風邪によってでる「咳」は、ゴホゴホするたびに子宮に響いて、きゅっと収縮するので心配になります。
そこで咳止めを飲みたいという妊婦さんもいますが、本来咳とは侵入したウイルスを体の外へと追いやるのが役目。
いわゆる防御反応なのです。
咳はむやみに薬で抑え込むのはやめましょう。
どうしても咳止めを使用するならば、激しい咳で夜も眠れないときのみにしましょう。
処方されるのは、メジコン、フスタゾール、リン酸コデインなどの鎮咳薬。リン酸コデインは嘔吐や下痢症状の改善効果もあります。
また、たんが絡んだ咳が出る場合は、ビゾルボンなどの去痰薬が処方されます。
②頭痛や熱が酷いとき
頭痛や発熱で辛いときは、症状を緩和するために鎮痛剤や解熱剤が処方されます。
妊娠中は、つわりによって激しい頭痛が起きることも。
注意したいのは、鎮痛剤や解熱剤の成分です。
妊娠中に安心して服用できるのは、アセトアミノフェンだけです。
アセトアミノフェンは効き目が穏やかで、効果が高い安全な薬です。
主に処方される鎮痛、解熱剤は、カロナール、ピリナジンアンヒバ、アルピニーなどです。
これらの成分はどれもアセトアミノフェンです。
1歳から4歳くらいまでの赤ちゃんに使用してもいい鎮痛、解熱剤もアセトアミノフェン成分だけなので覚えておきましょう。
連続使用するときは6~8時間以上間隔をあけるのが鉄則です。
③インフルエンザ
インフルエンザが疑わしいときは、産婦人科よりも先に発熱外来を受診してください。
各地域の保健所に問い合わせると、発熱外来のある病院を教えてくれます。
もしも、インフルエンザだと診断されたら、医師の判断によって抗インフルエンザ薬が処方されます。
これは、発熱などの症状があらわれる期間を短くする薬で妊娠中でも服用することができます。
特にぜんそくや心疾患のある妊婦さんは、インフルエンザの重篤化が心配されるので、医師の指示に的確に従いましょう。
インフルエンザの予防接種は、ウイルスの病原性を無毒化してあります。
そのため赤ちゃんに影響を与えることはありません。
妊娠週数に関係なく、インフルエンザの予防接種は受けておくようにしましょう。
妊婦さん本人だけでなく、一緒に暮らす家族全員に接種してもらうようにしてください。
④胃痛、胃がムカムカする
妊娠中であっても、ストレスなどで胃痛を起こしてしまうこともあります。
ひたすら我慢せずに、胃の粘膜を修復したり保護する胃薬は妊娠中であっても服用できます。
主に処方される胃薬は、セルベックス、ガスター、アルサルミン、マーズレンーSなどです。
これらの胃薬は、鉄剤と一緒に処方されることも多くあります。
⑤花粉症、ぜんそく、アレルギー
もともと花粉症やぜんそく、アレルギーで通院されていた方は、これまでの主治医と産婦人科の主治医と療法に相談しましょう。
特にぜんそくを持っている場合には、妊娠中こそしっかりと病状をコントロールして発作を起こさせないことが肝心です。
また、インタール点鼻薬やポララミン(錠剤)などが処方されることが多く、産婦人科の主治医の確認後に服用することが大切です。
⑥アトピー性皮膚炎の悪化、皮膚がかゆい
妊娠中は、ひどく皮膚のかゆくなることがあります。
これは妊娠性そうよう症といいます。
そしてアトピー性皮膚炎は妊娠中に悪化することがよくあります。
いずれの場合も、皮膚の炎症やかゆみを緩和するステロイド軟こうが処方されます。
ステロイドと聞くと心配になる妊婦さんも多いようですが、外用薬なので赤ちゃんへの影響は少ないと考えられています。
あくまで医師の指示に従いましょう。
ステロイド薬は、リンデロンVGやキンダベート、かゆみ止めはレスタミン軟膏、肌の保湿には、ケラチナミンやヒルドイドなどが処方されます。
⑦背中、腰が痛い
妊娠中は背中や腰が痛くなってしまうこともよくあります。
しかし、市販の湿布薬は使用しないでください。
市販の湿布薬にはインドメタシンが含まれており、赤ちゃんの血流を妨げる心配があります。
特に、妊娠後期の仕様は避けてください。
腰痛や背中の痛みも、産婦人科医に相談を。
妊娠中も安心して飲める薬はある
いかがでしたか?
私自身は妊娠中、これといったトラブルも起こらず、薬を服用したのは便秘に悩んだときだけでした。
もちろん、この時も産婦人科の主治医に相談して妊娠中に飲んでも心配のない薬を服用しました。
妊婦さんとひとくくりにいっても、体質も妊娠中の状況も様々。
少しでも不安になったら主治医に相談を。
そして、出産までの間、主治医とは密なコミュニケーションをとるように心がけていきましょう。