骨粗鬆症(こつそそうしょう)とは、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気。
現在、日本の骨粗鬆症患者は1,200万人以上いるといわれています。
そして男女比をみると、1:3で圧倒的に女性のほうが多く発症しています。
まだ自分は若いから大丈夫、と思わずに骨を強くする食べ物の摂取を心がけていきましょう。
目次
20代や30代からはじまる骨粗鬆症
70歳代にもなると2人に1人は骨粗鬆症であるといわれています。
ところが、骨密度の低下は20代や30代からすでにはじまっているのです。
高齢者の病気と思われがちですが、50歳代になると10人に1人が骨粗鬆症になっています。
これは女性の閉経が50歳前後にあり女性ホルモンの影響によって、骨密度が低下しやすくなることが原因。
その一方で男性には閉経などの急激な骨密度の低下はないので、加齢とともに骨密度がゆっくりと低下していくのです。
50代になったら注意したい骨折
高齢者に多い骨折が、骨粗鬆症が原因となって発生する「脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折」です。
この骨折は転んだ程度のちょっとの外的力で骨が折れてしまうことを意味しています。
最も多いのは、背骨の「推体(すいたい)骨折」で下半身ならば「大腿骨(だいたいこつ)骨折」が多くなっています。
「推体(すいたい)骨折」はもろくなってしまった推体が体の重みで圧迫され、潰れた状態をいいます。
そのため背中が曲がったり身長が低くなります。
「推体(すいたい)骨折」の一番の問題は、その痛みに気が付かなかったり慢性的に続く腰痛であると勘違いする人が多いということです。
実際に、「推体(すいたい)骨折」患者のうち1/3程度の人しか治療を受けておらず、残りの人は知らないうちに骨粗鬆症が進行している可能性も。
また脚の付け根が折れてしまう「大腿骨(だいたいこつ)骨折」は重症だと歩けなくなり寝たきりになる原因にもなります。
そうなると更に筋力が低下して骨粗鬆症も進行しやすくなってしまいます。
一度骨粗鬆症による骨折を起こしてしまうと、再び骨折するリスクは4倍にもなります。
骨折を繰り返してしまうことで、日常生活に支障をきたしたりする危険性も高くなります。
「推体(すいたい)骨折」や「大腿骨(だいたいこつ)骨折」は70歳代に急増しますが、手首の骨折は50代から増加傾向にあります。
手首の骨折がきっかけとなって、骨粗鬆症が発見されることも少なくはありません。
骨の強さ=骨密度と骨の質
骨の強度を決めるのは、骨密度と骨質。
7割がたは骨密度によって決まり、残りの3割は骨質に影響されます。
骨密度
骨密度は、骨に含まれるカルシウムを代表としたミネラル量を表しています。
一般的にいう「骨密度が高い」という骨は、骨の中にミネラルがたっぷりと詰まっていて隙間のない状況であることを指します。
健康な骨ほど、骨密度が高くなります。
反対に、「骨密度が低い」といわれる骨はミネラルが少なく骨がスカスカになっている状態を指します。
骨密度の低下がすすんでしまうと、骨粗鬆症へと進行します。
骨質
骨密度以外に骨の強度を示すのが骨質。
たとえ骨密度が高かったとしても、それを支える構造自体がしっかりしていなければ意味がありません。
骨の骨組みそのものともいえる骨質の中で、最も重要な働きをしているのがコラーゲンです。
コラーゲンは骨の主材料であるカルシウムなどをつなぎ合わせる役目を担っています。
骨の健康とはつまり、骨密度が保たれ骨質が正常であること。
この2つが揃わなくてはならないのです。
どうして骨粗鬆症になるの?
骨も髪の毛や皮膚などと同じように、毎日古い細胞から新しい細胞へと入れ替わっています。
骨を破壊する細胞を破骨細胞、新しい骨を作る細胞を骨芽細胞といいます。
破骨細胞
破骨細胞は、骨の表面に集まっており、古くなった骨の成分を吸収、そして壊していきます。
そして古い細胞を壊し終わると消えていきます。
骨芽細胞
骨芽細胞は壊された骨の表面に集まってコラーゲンなどを分泌して骨を修復しています。
ここにリンやカルシウムが沈着することで骨が形成されていきます。
これらの骨の新陳代謝は骨代謝といわれ、人が生まれてから亡くなるまで絶えず繰り返されます。
このバランスが保たれていると骨は健康な状態を維持することができます。
しかし、バランスが崩れると骨密度の低下にもつながります。
そして骨の強度を維持するコラーゲンが不足すると、骨密度が高くても骨の質が低下し骨粗鬆症になり骨折を起こしやすくなります。
骨粗鬆症チェック
骨粗鬆症のチェックとして、体重と年齢で自分の骨の状態を知ることができます。
体重から年齢をひいて、その値に0.2をかけます。
その値が骨粗鬆症の危険度をあらわします。
危険度が-4未満であれば高危険度、-4~-1未満は中等度、-1以上であれば低危険度です。
また、腰や背中に痛みを感じていたり若いころと比べて身長が3センチ以上も縮んだ、という人も危険度が高いので注意しましょう。
他にも、骨密度を調べる検査には以下のようなものがあります。
骨密度検査
DXA法
DXA法とは異なる二種類のX線で腰椎や太ももの付け根である大腿骨近位部の骨密度を測定します。
一番簡単な計測方法です。
MD法
MD法はX線で手の骨を撮影して骨密度を測る方法です。
超音波検査法
超音波検査法はかかとの骨に超音波をあて、骨密度を測定します。
これらの骨密度検査は、主に整形外科で受けることが可能です。
現在では国の制度として、40歳から70歳までの女性を対象に5歳ごとに行われている「節目健診」でも骨粗鬆症検診が含まれています。
骨を強くする食べ物で骨密度低下を予防
骨密度が低下している人は、しっかりと栄養バランスがとれた食事で骨粗鬆症予防を行っていくべきです。
骨密度の低下を防ぐために欠かせない栄養素がカルシウム。
その他にもビタミンD、ビタミンK、たんぱく質も欠かせません。
カルシウムは、骨の材料になる栄養素。
そのため意識的に摂っていく必要があります。
現代の日本人はどの世代もカルシウムの摂取が不足しています。
50歳代でみても厚生労働省の推奨量が650mgであるのに対し、平均摂取量は500mgにとどまっています。
しかも骨粗鬆症の治療が必要である人であれば、800mg程度のカルシウム摂取がすすめられています。
不足を補うためにも、毎日の食事でしっかりとカルシウムを摂取していくことが大切です。
カルシウムは、乳製品、大豆製品、野菜、海藻、小魚などに多く含まれています。
骨を強くしていく目安として、カルシウム量が200mg摂取できる食品の量を覚えておくようにしましょう。
カルシウムが200mg摂取できる目安量 | |
牛乳 | 180ml |
ヨーグルト | 160g |
プロセスチーズ | 30g |
木綿豆腐 | 1/2丁 |
小松菜(ゆで) | 130g |
めざし | 4尾 |
干しヒジキ | 15g |
しらす干し | 40g |
がんもどき | 160g |
ごま | 大さじ2 |
ビタミンDを多く含む食品 |
鮭、さんま、うなぎ、丸干しイワシ、干ししいたけ |
ビタミンDは、魚類や乾燥させたキノコ類などに多く含まれています。
腸でのカルシウムの吸収率を高めます。
そのためカルシウムとビタミンDを一緒に摂ることが効率よいカルシウム摂取ということ。
またビタミンDは、日光に当たることで体内でも合成されます。
そのためあまり外出の機会がない人はどうしてもビタミンDが不足しがちになります。
日光にあまり当たれていない自覚のある人は、積極的にビタミンDを食べ物から摂る様にしましょう。
ビタミンKを多く含む食品 |
納豆、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー |
ビタミンKは骨芽細胞の骨形成を促します。
これらの食材を1日に2品程度、またはそれぞれを半分ずつ4品取り入れた献立を考えるのがおすすめです。
骨を強くするには、カルシウムだけでなくビタミンDやビタミンK、たんぱく質も意識的にしっかり摂る様にしましょう。
たんぱく質は筋肉はもちろん、臓器や血管などの体をつくる元となる重要な栄養素です。
そしてカルシウムが骨に沈着する際にも必要とされることもわかっています。
良質なたんぱく質をしっかりと摂れば、骨を強くするだけでなくサルコペニアなども予防できます。
サルコペニアとは、加齢によっておこる筋肉量減少に加え、歩く速度が落ちたり握力が低下するなど身体機能に影響がみられる状態をさします。
デスクワーク中心で座りっぱなしの生活をしている若い人や、車移動が多い人、日常的にあまり体を動かしていない人は筋肉が著しく減少している可能性があります。
骨をしっかりと強くすることを意識するだけでなく、筋力の低下も予防していくことを忘れないようにしてください。