最近では、腸内フローラや育菌、とにかく菌にまつわるあれこれが、美容の世界でも注目されています。
美容・健康は腸内細菌によって保たれ、お肌は善玉菌の働きによって美肌を保つようになっている。
育菌は、育菌スキンケアだけでなく体全体にとって大切なのです。
美容にも健康にも強くかかわる「菌」について、基本をしっかりとおさえておきましょう。
目次
体に棲む菌を知ろう
地球の1/3は水。
1/3は土。
そして残りの1/3を占めているのが、微生物などです。
微生物によって地球環境全体がコントロールされていて、私たちの体も同じように微生物によってコントロールされているのです。
私たちの体内に棲む菌はなんと2.5キロにも及びます。
そのうちの1.5キロほどが腸内細菌です。
細菌の種類は1,000種類以上もあり、数にすると600兆~1,000兆個もあるといわれています。
この細菌の中でも、体にとっていい働きをする菌を増やすことができれば、美容や健康も保たれますが、逆に体に悪い菌が増えてしまえば、毒素や有害物質が作られ、色々な病気の発生源になることも。
最近では、腸に関わる病気だけでなく、がんや肥満、脳機能の低下にも腸内細菌が関わっていることも明らかになっています。
そして、私たちの肌にも20種類、数100億個ともいわれる常在菌が棲んでいます。
腸内細菌と比べると数は多くないものの、部位によって菌の構成や種類が異なります。
肌にいる常在菌も腸内細菌と同じように、善玉菌と悪玉菌がいます。
善玉菌が増えれば肌は美しくなり、悪玉菌が増えれば肌荒れやカサつき、かゆみ、ニキビといった肌のトラブルがあらわれてきます。
私たちの体に棲む沢山の菌をコントロールすることこそ、美肌や健康の維持につながるのです。
例えば、太りやすくて痩せにくい・・・と悩んでいるひとは、腸内細菌のバランスが原因かも。
痩せている人と太っている人とでは、腸内細菌の種類のバランスが異なることもわかっています。
そして、保湿しているのに肌のカサつきが良くならない・・・と悩んでいる人は、肌に棲んでいる皮脂を好む菌が増殖しすぎているのかもしれません。
美や健康にかかわる菌の生息スポット3つ
日本の女性の約半数は、便秘に悩まされています。
便秘によって顕著に起こるのが肌のトラブル。
便秘によって腸内細菌のバランスが乱れれば、乾燥肌や吹出物などの肌トラブルがおきます。
それに加えて、肌に棲む常在菌のバランスの乱れが更なる肌トラブルを起こすのです。
肌以外でも、頭皮トラブルによってフケが出やすくなったり、髪の毛がへたりやすいなど、頭皮の常在菌がトラブルをおこすことも。
全身の2.5キロの菌の中でも、大腸、肌、頭皮、の3つのスポットはしっかりケアしていきたいものです。
1.肌
肌は常に外部から侵入しようとする「敵」から体を守るバリアのような役目を果たしています。
この肌の表面に棲んでいるのが、人間ととても相性の良いとされる「表皮ブドウ球菌」なる善玉菌です。
「表皮ブドウ球菌」が活発に動くと、「黄色ブドウ球菌」などの悪玉菌をブロックしてくれるのです。
年齢の割に若く見える、いつも肌に艶がある、なんて人は菌バランスが上手に保たれているということになります。
2.腸
大腸は食べた物の残りかすを便に変えて排泄する場所ですが、ただ便を出すだけではありません。
ほとんどの腸内細菌が棲みついている場所でもあり、ビフィズス菌や乳酸菌、ラクサン菌などの善玉菌や、増えすぎると有害物質を発生する悪玉菌や、それ以外の日和見菌などが存在しています。
これらの全ての菌のバランスこそが、大腸の状態の良しあしを左右しています。
3.頭皮
頭皮と体の肌の構造はほとんど変わりません。
そのため頭皮に棲む常在菌も、顔や体に棲んでいる菌と同じようなものであることがほとんど。
しかし、髪の毛が密集して生えていたり、皮脂分泌も多いという点から、肌と比べると菌のバランスがわずかながらに違います。
アクネ菌やマラセチア菌は皮脂が大好物。
そのため増えてしまいがちになるのです。
肌に棲む菌のバランス
肌に棲んでいる菌について、もっと詳しくみていきましょう。
肌は、一番外側に皮脂膜があり、角質層などの幾重もの層を持つ表皮、その下にあるのが真皮です。
肌の常在菌が棲みついているのは、最も外側にある皮脂膜の部分。
この中で表皮ブドウ菌、レンサ球菌、アクネ菌、マラセチア菌が、常に勢力争いを繰り返しています。
善玉菌が優勢になることが、もちろん好ましいのです。
しかし、20代前半くらいまではTゾーン、20代後半からはUゾーンにアクネ菌やマラセチア菌が増えやすくなるので、ニキビや皮膚炎が出来てしまいます。
育菌スキンケア
育菌スキンケアとは、トラブルを招く菌が増えるのを防ぎつつ、美肌の要である「表皮ブドウ球菌」が棲みやすい環境を作ることがポイント。
洗いすぎも、洗わなすぎもNG。
肌の状態をしっかりと見極めながら、自分の肌の状態にあったケアをしていくことが重要です。
赤み・ニキビ
赤みやニキビのトラブルは、増えすぎてしまったアクネ菌やマラセチア菌が原因。
メイク落としや洗顔フォームでの洗顔は1日1回が理想的。
でも、赤みやニキビ、肌のカサつきが気になるときには、アクネ菌やマラセチア菌が増えすぎてしまっている状態。
こんな時期は2回目も洗顔フォームを使用して気になる部位を洗いましょう。
1回目は顔全体を、2回目はニキビができているところやカサつきの気になる部分を洗ってください。
敏感肌・アレルギー
敏感肌やアレルギーに悩んでいるのなら、守りを固める意味でも表皮ブドウ球菌が喜ぶような環境を作っていきましょう。
善玉菌が快適に過ごすためには、水が不可欠。
ミネラルウォーターや加湿器などを利用して、肌にたっぷりと潤いを与えましょう。
黄色ブドウ菌を退治することのできる「汗」をかくのも美肌への育菌スキンケアのひとつといえます。
表皮ブドウ球菌やアクネ菌、マラセチア菌は、30度くらいでないと元気を保つことができません。
そのため肌は冷やしすぎないことが重要。
マスクをうまく利用したり、肌が冷えすぎない対策をしていきましょう。
洗顔は、1回で常在菌を1/3も減らすといわれています。
洗いすぎれば、菌の棲み処である角質までをもはがしてしまうこともあります。
石鹸や洗顔フォームでの洗いすぎには注意してください。
週に1度はノーメイクで過ごすことも、菌を休められるので「育菌スキンケア」といえます。
美肌づくりには腸内細菌も重要
肌の常在菌と同じくらい、美肌づくりに関わっているのが腸内細菌。
腸内細菌は最近まで善玉菌と悪玉菌、それ以外の日和見菌の3つに分類されると考えられてきましたが、もっともっと複雑であることが明らかになってきています。
腸内細菌は生まれるときに母親から引き継ぎます。
新生児の時点では、ビフィズス菌が優勢で他の菌が抑えられています。
そして成長する過程において、菌の勢力関係も変化していきます。
ビフィズス菌や乳酸菌、ラクサン菌は、体にとてもいい働きがありますが、日和見菌に限ってはまだまだどんな働きをするのかがわかっていないのです。
腸内細菌のバランス
現時点でわかっている腸内細菌は以下の通りです。
善玉菌代表(味方)
ビフィズス菌グループ
ロングム菌、ビフィダム菌など。
これらは人間の腸内に最も多く存在するといわれている善玉菌。
オリゴ糖などを分解して、酢酸・乳酸を作り出し、腸内環境を酸性にすることで悪玉菌を鈍らせます。
腸内環境の良しあしはビフィズス菌がどれだけ腸内にいるかがカギ。
乳酸菌グループ
ラムノーサス菌、サーモフィルス菌、ブルガリア菌など。
乳酸菌グループもブドウ糖などの糖質を分解して乳酸を作り出し、腸内環境を酸性に保っています。
これらの乳酸菌はヨーグルトや乳酸菌飲料を製造するときに必要ですが、本来もともと人間の腸内には多く存在していません。
ラクサン菌
どんな働きをしているのかは、長年わかっていませんでした。
しかし最近になって、糖から酪酸を作りだし、腸内環境を整えていることが分かりました。
長寿な人の腸内環境には、ビフィズス菌やラクサン菌が多く生息しているともいわれています。
長寿菌などともよばれ、最近とても注目されています。
悪玉菌代表(敵)
ウェルシュ菌
たんぱく質などをエサにして有害物質を作り出します。
食中毒や感染症の原因にもなる悪玉菌の代表です。
おならが臭い場合には、この菌が多くいるという証拠。
黄色ブドウ球菌
善玉菌は腸内で、体に役立つ発酵作用を促しているのに対して、悪玉菌は体によくない腐敗作用を促しています。
黄色ブドウ球菌は、腐った食べ物の中で繁殖します。
それが体内へと入り、増殖することで食中毒の原因になります。
未だ謎の菌
大腸菌(無毒株)、ファーミキューテス、バクテロイーデスなど。
ファーミキューテス、バクテロイーデスは、未だどのような菌であるのかわかっていません。
しかしながら、腸内でのバランスによって「太っている、痩せている」に影響していることが明らかになってきました。
日和見菌の代表である、無毒性大腸菌も未だ謎です。
他にも数えきれない腸内細菌が、未だはっきりと解明されていません。
腸内細菌を育菌!する10つのポイント
腸内細菌のバランスは、生活習慣や食習慣によって簡単に変化するといわれています。
ならば、善玉菌を優勢にする習慣をつけておきたいものです。
私たちの排泄する便の8割は水分。
残りは食べ物のカスや、剥がれた腸の粘膜、そして腸内細菌です。
こんな構造の便を数日間も腸内に溜めておくと、腸内でどんどん腐敗がすすみ、腸内環境もどんどん悪くなっていきます。
10つのポイントを押えて、善玉菌を育菌して腸内細菌バランスを整えることこそが、スキンケアにもつながるのをお忘れなく。
1.野菜は1日350グラム
たとえ毎日ヨーグルトを食べていても、悪玉菌を減らしてくれる食物線維が不足していては意味がありません。
2.座りっぱなしはしない
仕事中、すっと座っている。という人は、腸内に悪玉菌を溜めこんでしまう原因にも。
休憩には必ず立ち上がるなどして、適度に刺激を与えましょう。
3.インナーマッスルを鍛える
悪玉菌の排出にも、下腹部のインナーマッスルは関わっています。
毎日スクワットを日課にするなど、しっかりインナーマッスルを鍛えることは便秘改善にもつながります。
4.ストレスは溜めない
美しくなる、ダイエット、どんな項目からみてもストレスは敵。
中でも腸はとてもストレスに弱い臓器であるといわれています。
ストレスは上手に解消しましょう。
5.育菌をはじめよう
まずは育菌よりも、自分の善玉菌保持を意識しましょう。
ヨーグルト選びに悩むのなら、まずはトクホマークの商品から。
※ヨーグルト選びはこちらの記事を参考に
機能性ヨーグルトの選び方がわかります。
6.意識的に歩こう
一駅分なら歩こう、など日頃から体を動かすことを心がけましょう。
腹筋が鍛えられることで、悪玉菌を溜めこみにくい体づくりができます。
7.玄米を食べてみよう
食物繊維は白米から玄米へと変えるだけでも、より摂取できます。
1口につき30回は咀嚼するようにしましょう。
8.甘味はオリゴ糖で摂る
甘味料はすべてオリゴ糖で代用してみましょう。
オリゴ糖は善玉菌のエサになります。
9.油はオリーブオイル
健康的な植物油は人気ですが、オリーブオイルに含まれるオレイン酸は大腸まで届いて、腸の収縮運動もサポートしてくれます。
10.ヨーグルトは1日300グラム
ビフィズス菌をサポートするヨーグルトは1日300グラムが目安。
腸に定着することはないので、毎日食べないと意味がありません。
3週間は継続しましょう。
育菌スキンケアまとめ
育菌スキンケアいかがでしたか?
腸内細菌は知っていたけど、肌の状態までも菌にコントロールされているなんて知らなかった!という人も多いのでは?
汗を沢山かいた後に、なんだかお肌が綺麗になると感じるのは、汗によって黄色ブドウ菌を退治していたからだったのですね。
夏場は特に悩みのひとつである、汗ですが、美肌に一役かっていたとは驚きです。
育菌スキンケアの基本は、肌を清潔に保ちしっかりと保湿する、そして適度に汗をかくことも大事。
そして腸内細菌のバランスもしっかりと意識していくことも忘れてはいけません。
肌も腸も、善玉菌優勢の好環境にしていきましょう。